『高野山・金胎不二(こんたいふに)の世界』

スターエンジェル

2016年12月02日 20:35

みなさんこんばんは

密教には金胎不二という考え方があります。
金とは、金剛界(こんごうかい)のことですが、この金剛というのはダイヤモンドのことですね。
大日如来の智恵がダイヤモンドのように強く、決して壊れないという意味ですね。
そしてそのような素晴らしい智恵の世界を金剛界と言います。
その世界を現す「金剛界曼荼羅」というものがあります。




またもう一方に胎蔵界(たいぞうかい)という世界があります。
胎蔵とは、母親が胎内で子供を育むように、大日如来の大いなる慈悲によって、私たちが本来持っている仏性が育っていくという意味です。
それを視覚的に表した「胎蔵界曼荼羅」というものがあります。




曼荼羅は金剛界と胎蔵界の両方が揃って一つと言われています。
金胎不二(こんたいふに)とは、金剛界と胎蔵界とは別々のものではなく、本来一つであるという意味ですね。
バランスの大切さでもあるでしょうし、二元性を統合するという意味もあるでしょう。
金剛界を男性性、胎蔵界を女性性と考えると、男性性と女性性のバランスを取るという意味、そして男性性・女性性の統合という意味にもなります。


しかし空海は曼荼羅においてのみ、両方の世界のバランスを取ったわけではありませんでした。
高野山の壇上伽藍においてもバランスを取ろうと思ったのです。
金剛界を現す根本大塔(こんぽんだいとう)と胎蔵界を現す西塔(さいとう)の両方を建てることで、バランスを取り壇上伽藍に金胎不二の世界を創ろうとしたのです。


根本大塔(こんぽんだいとう)という素晴らしい塔の中では、まさに仏様の美しい世界が展開されています。
曼荼羅の絵は平面ですが、空海はそれを立体的にとらえることができるように、仏像を前後左右に並べて、絵の曼荼羅の世界を空中に浮かび上がらせました。
まるで曼荼羅が3D映像になったかのようです。
平安時代の当時に観た人々はさぞかし驚き、そして感動したことでしょう。
現代に生きる私も感動しました。




その根本大塔の中心には大日如来がいらっしゃって、その周りを金剛界の如来様が4体、取り囲んでいる形です。
ここで興味深いのが、中央の大日如来が手で結んでいる“印“が、金剛界の印ではなく、なんと胎蔵界の印である”法界定印(ほうかいじょういん)“であるということです。





周りは金剛界の如来様方がいらっしゃるのに中央の大日如来だけは胎蔵界の印を結んでいる。
これもまた空海が意図したことですね。
根本大塔の中でもまた金胎不二を創り出そうとしたわけです。


そして胎蔵界を現す西塔(さいとう)でも同じことが展開されています。
中央の大日如来は金剛界の印である“智拳印(ちけんいん)”を結んでいらっしゃいます。
そして周りを胎蔵界の如来様方が囲んでいるという形です。
西塔の中でも金胎不二が表現されているわけです。








空海はなぜそこまでして、金胎不二を現したかったのでしょうか。
それはその金胎不二こそが大日如来の本当の姿だからだと思います。
金剛界と胎蔵界はそれぞれ大日如来の智恵と慈悲の側面を現していますが、両方有している大日如来そのものを現すためには、金胎不二の世界を見せる必要があったのでしょう。
山上に現れた大日如来の仏国土(ぶっこくど)。
空海は高野山に、宇宙を現す大日如来そのものを表現したかったのではないでしょうか☆



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