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Posted by おてもやん at
『パイドン』(プラトン著 岩田靖夫訳 岩波文庫)より死についてのソクラテスの考えをご紹介したいと思います。

尚、この作品はソクラテスが服毒による刑死を控え、獄中で弟子たち(シミアスとケベス)と哲学的対話をするものです。







《P36~》

ソクラテス  本当に我々に明確に示されているところでは、もしもわれわれがそもそも何かを純粋に知ろうとするならば、肉体から離れて、魂そのものによって事柄そのものを見なければならない、ということである。

〈中略〉すなわち、地を獲得することはいかにしても不可能であるか、それとも、可能であるとすれば死者にとってのみである。なぜなら、死んだ時にはじめて、魂は肉体から離れ、自分自身になるだろう。死ぬ前には駄目なのだ。
そして、われわれが生きている限りでは、どうしても避けられない場合を除いては、できるだけ肉体と交わらず共有もせず、肉体の本性に汚染されずに、肉体から清浄な状態になって、神ご自身がわれわれを解放する時を待つのである。

〈中略〉思うに、なにかこんなことが、シミアス、真実に学を愛するすべての人々がお互いに語り合い、また考えている事柄でなければならない。それとも、君にはそうは思われないかね



シミアス   なににもまして、そう思います、ソクラテス



ソクラテス  もしもこれらのことが真実であれば、友よ、僕がこれから行くところへ到達した者には大きな希望があるのだ。もしどこかでありうるとすれば、そこでこそ、われわれが、過ぎ去ったこれまでの人生において、そのために大きな勤勉さをもって追究してきたそのものを充分に獲得するという希望があるのである。だから、今僕に命令されている旅立ちは善い希望とともに行われるだろう。〈後略〉



シミアス   本当にその通りです



ソクラテス  それなら、浄化(カタルシス)とは、この議論の中で先ほど語られたように、魂を肉体からできるだけ切り離すこと、そして、魂を肉体のあらゆる部分から自分自身へととり集め、自分自身として凝集するように習慣づけること、そして、現在においても将来においても、足枷のごときものである肉体から解放されて、魂ができるだけ自分自身だけで単独に生きるように習慣づけることではなかろうか



シミアス   たしかに、その通りです



ソクラテス  ところで、正にこのことが、すなわち、魂の肉体からの解放と分離が、死と名づけられるのではないか



シミアス   まったく、その通りです



ソクラテス  だが、われわれの主張では、魂の解放をつねに望んでいるのは、特に、いや、ただ、正しく哲学している人々だけなのである。そして、哲学者の仕事とは、魂を肉体から解放し分離することである。そうではないか



シミアス   そうだと思います



ソクラテス  それでは、始めに僕が言ったように、人生において、できるだけ死んでいることの近くで生きようと自分自身を準備してきた人が、いざその死がやって来ると、憤激するというのは、笑うべきことではないか



シミアス   笑うべきことです。どうして、そうでないことがありましょう



ソクラテス  それなら、本当に、シミアス、正しく哲学している人々は死ぬことの練習をしているのだ。そして、死んでいることは、かれらにとっては、誰にもまして、少しも恐ろしくないのである。こういう風に考えてみたまえ。

もしも、かれらが到るところで肉体と仲たがいをしてきて、魂それ自身だけを持とうと熱望してきたのに、そのことが起こると、恐怖を覚え憤激するというのでは、これ以上の不合理はないだろう。あの世へ着けば、一方では、生涯を通して憧れつづけてきたもの、知恵、を得るという希望があり、他方では、争いつづけてきたものと一緒にいることから解放されるというのに、あの世に行くのを喜ばないなんて。〈後略〉



シミアス   ゼウスにかけて、確かにまったく不合理です





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”人生において、できるだけ死んでいることの近くで生きようと自分自身を準備” することが肉体を持っている間の生き方なのだろうと思いました。

この地上にいながらも、魂の存在として肉体や物質的な制約からいかにして自由になるか、それは私たちの一瞬一瞬の選択にかかっているでしょうね。

望まなければ、また目指さなければ、自由にはなれないのでしょう。望むことの習慣化を図っていくことが必要ですね。



ソクラテスは肉体を離れ魂の世界に行くことを喜びと感じていますが、これは魂の世界が存在するという前提ですね。

それについての議論がさらに深まっていきます。

どうぞ次回もお楽しみに(*^_^*)
  


Posted by スターエンジェル at 22:00Comments(0)『パイドン』☆ソクラテスとの対話